ホーム > ライフセトルメント投資入門

ライフセトルメント投資入門

「生命保険の転売市場」の仕組みと展望

ライフセトルメント投資入門

新たな金融商品「ライフセトルメント」の商品特性や米国市場成立の経緯、そのの仕組み等々を包括的に詳述。金融関係者必読の書

著者 日本ライフセトルメント研究会
板垣 哲史
ジャンル ビジネス
ビジネス > 投資
出版年月日 2011/01/17
ISBN 9784862041760
判型・ページ数 A5・224ページ
定価 本体1,800円+税
在庫 在庫あり
 

目次

はじめに
▲序章 生命保険を実質的な資産に変える転売市場
1 資産のようで資産ではない生命保険
長寿化と少子高齢化、そこにある危機/個人が所有する金融資産とその課題
2 生命保険の転売を可能にする2次市場
米国では生命保険が資産として流通する/日本で保険を転売しようとした事例/生命保険の2次流通市場の存在意義/日本の消費者が置かれている状況
3 ライフセトルメント投資への関心の高まりと期待
投資対象としてのライフセトルメント/ライフセトルメント投資への関心の高まり/ライフセトルメント投資の魅力/米国市場へ向かう日本の投資資金

▲第1章 米国のライフセトルメント市場
1 ライフセトルメントとは
生命保険の契約者にとって新たな選択肢と経済的メリット/米国のライフセトルメントの対象/ライフセトルメントは生命保険の2次市場での取引/第三者として購入する投資家
2 エイズ患者を救済したバイアティカルセトルメント
ライフセトルメントの先駆け/バイアティカルセトルメントの意義/消費者の新たな選択肢となったバイアティカルセトルメント/バイアティカルセトルメントの動機の多様化
3 ライフセトルメントの動機
生命保険購入の動機/生命保険の現金化を選ぶ理由
4 ライフセトルメントの法規制
州法による規制/STOLI取引の禁止/STOLI取引の定義と被保険利益/可争期間、不可争期間と自殺免責期間
5 伝統的な金融資産のリターン特性
伝統的な金融資産にはどのようなものがあるか/各資産のリターンの源泉=価値を決める主な要因
6 ライフセトルメントの資産特性
ライフセトルメントのリターンの源泉/ライフセトルメントのリスク特性/ライフセトルメントが持つ低相関のメリット/収益のブレ(ボラティリティ)は存在する

▲第2章 ライフセトルメントの基となる生命保険の仕組み
1 生命保険の基本的な仕組み
生命保険の商品特性を反映したライフセトルメント/生命保険の構造/従来の生命保険契約の現金化/ライフセトルメントが切り拓いた生命保険の金融商品化
2 確率論の上に成り立つ生命保険
確率論によって導かれる大数の法則/誤差の近似に用いられる中心極限定理/サンプル数を多く取ると異常値や誤差による影響度合いが減る/保険会社の経営が成立するための数式
3 生命表について
保険料と保険金をつなぐ生命表/生命表の数学的な定義――生命関数/生存率曲線について/生命表の実務上の扱い
4 日本の生命保険と支払保険料
支払保険料の中身の理解が重要/純保険料と付加保険料の違い/保険の種類は支払保険料の中身で決まる/日本の生命保険の主流は3種類
5 日米における生命保険の違い
日本にはない種類の保険が米国の主流/ライフセトルメントの対象として好適な米国ユニバーサル保険/人の生命をお金に換算することへの日本人の根強い抵抗感/死亡保障の大きい生命保険が戦後普及した日本/1911年から始まった米国ライフセトルメントの歴史

▲第3章 ライフセトルメント投資の仕組み
1 ライフセトルメント投資の基本的な仕組み
生命保険契約の「金融商品」としての特異性/保険契約からライフセトルメントへ/ライフセトルメント投資に不可欠な3つの基本概念
2 ライフセトルメント投資の取引関係者と取引の流れ
多くの取引関係者が支えるライフセトルメント投資/取引関係者の利害関係/ライフセトルメント投資の取引の流れ
3 ブローカーとプロバイダー
消費者(保険契約者)の代理人ブローカー/投資家の代理人プロバイダー
4 メディカルアンダーライター
メディカルアンダーライターに求められる高度なノウハウ/ライフセトルメントのポートフォリオ分散投資を促すデビット・クレジット・モデル/大手メディカルアンダーライター
5 細分化される取引関係者の役割
保全事務管理会社(モニタリング機関)の業務内容/契約照査サービス会社とは/資本市場を形成する買い手側の取引関係者
6 ライフセトルメントの証券化
証券化の基本的な知識/ライフセトルメント証券化の実際

▲第4章 ライフセトルメント投資の魅力
1 投資家から見たライフセトルメント投資の魅力
相対的に高い利回りを長期間にわたり安定的に享受可能/伝統的な金融資産と比べた場合の低相関という資産特性
2 成長を続けるライフセトルメント市場
2002年以降に急拡大した市場規模/リーマンショック後は買い手市場に/潜在的な成長力はさらに巨大に
3 巨大年金、投資銀行などが有力投資家として参入
米大手生命保険会社が突破口に/投資家の裾野が広がるライフセトルメント市場
4 ライフセトルメント投資の魅力を最大限に活かす投資方法
代表的な投資方法は3種類/ファンドの基本的な仕組み/ファンドを通じた投資が魅力的な理由

▲第5章 ライフセトルメント投資のリスク
1 ライフセトルメントのリスク特性
ライフセトルメントの固有リスク/投資家から見たリスク管理の勘所
2 長寿化リスクとは何か
「長寿化」がなぜリスクになるのか/生存中に予想余命は変化する/長寿化リスクへの対応
3 生命保険会社の信用リスク
影響度が大きいリスク/保険会社の信用力を測る尺度――ソルベンシー・マージン比率/リーマンショックで明らかになったカウンターパーティーリスクの危険度
4 流動性、法的、倫理的リスク
計量化できないリスク/流動性リスク/法的リスク/倫理的リスク

▲第6章
ライフセトルメント投資の収益構造と評価方法
1 投資家から見た収益構造の概要
主要3者の収益/投資家におけるキャッシュフロー
2 ライフセトルメント投資のキャッシュフロー
キャシュフローの3つのシナリオ/投資家にとって損失となるシナリオ3のケース
3 ライフセトルメントにおける価格決定
価格決定に不可欠なファクター/価格決定が必要な2つの局面
4 ライフセトルメント投資のプライシングの前提
プライシングモデルの前提は割引現在価値(DCF)法/割引現在価値(DCF)法の概要
5 代表的なプライシングモデル
プライシングモデルは投資家の生命線
ディターミニスティック・プライシングモデル/プロバブリスティック・プライシングモデル/ストキャスティック・プライシングモデル
6 ライフセトルメントにおける解約払戻金の評価
解約払戻金(サレンダーバリュー)とは/支払保険料と解約払戻金/生命保険の売却価格が解約払戻金を上回ることができる理由/保険会社の対応策

▲第7章 ライフセトルメント投資の今後の展望
1 日本の投資家によるライフセトルメント・ファンドへの直接投資
ライフセトルメント・ファンドは外国籍投信/外国籍投信への直接投資の留意点/国内投信を経由する間接投資という選択肢
2 ライフセトルメント・ファンドへの間接投資
国内投信を通じた外国籍投信への投資スキーム/ライフセトルメント・ファンドにおける公募投信と私募投信の違い
3 ライフセトルメント投資の課題
リーマンショック後に再び高まった代替投資ニーズ/ライフセトルメントの投資環境/倫理的な抵抗感という課題
4 日本の裁判事例について
生命保険の売却に関する初の訴訟/裁判の経緯/高裁判決と付帯意見/マスコミの反応/今後の課題
5 日本の学界での研究について
日本の研究論文一覧/研究テーマの各論/日本における買い取り制度導入可能性の視点
6 ライフセトルメントの今後の展望
海外での展望/日本における消費者保護の動き/消費者(保険契約者)と投資家の利益保護を目指して

▲付章 ライフセトルメントの歴史
《米国》ライフセトルメント年表
1 黎明期 1911年――バイアティカルセトルメントとライフセトルメントの原点
生命保険譲渡自由化の法的根拠となった1911年の米最高裁判決/ホルムズ最高裁判事の判決理由/最高裁判決の意義
2 第I期 1980年代~1996年頃――バイアティカルセトルメントの興隆
1980年代:バイアティカルセトルメント誕生の背景/1988年:最初の生命保険買取会社の発足
3 第II期 1996年~2000年頃[1]――バイアティカルセトルメントの問題と法整備
悪徳商法の横行と社会問題化/1990年代前半:取引規制法整備の始まり/1990年代中頃:業界団体の結成と優遇税制/1990年代後半:エイズ新薬によるバイアティカルセトルメントの失速
4 第II期 1996年~2000年頃[2]――新しい金融商品ライフセトルメントへの期待
ライフセトルメントの誕生/ライフセトルメントへのバトンタッチ/2000年代前半:ライフセトルメントの認知度の広がり
5 第III期 2000年~2007年頃[1]――機関投資家の参入と市場の拡大
内外機関投資家の参入による取引規模の拡大/ドイツ以外の海外投資家の参入/市場規模の拡大
6 第III期 2000年~2007年頃[2]――法規制の整備と業界団体の設立
STOLI取引とその規制/ライフセトルメントの優良取引慣行に向けた各団体の動き/会計規則の整備
7 第IV期 2008年~[1]――リーマンショックの余波による停滞
ライフセトルメント投資の停滞と市場利回りの上昇/取引市場の停滞
8 第IV期 2008年~[2]――ライフセトルメント証券化への動き
デスボンド/投資銀行の証券化ビジネスへ向けた動き/ライフセトルメント市場は証券化の段階へ
9 第IV期 2008年~[3]――証券化のその後と2010年の新たな展開
カナダの格付け会社DBRS詣で/ゴールドマンサックスのつまづき/2010年の業界動向/ライフセトルメント業界の新たな動き

●特別寄稿 「ライフセトルメントの余命算定」 執筆/ファサーノ・アンド・アソシエイツ社
1 生命表とライフセトルメントの余命算定
生命表の背景と死亡率算定のためのデビット・メソードについて/ライフセトルメントと生命保険会社における余命算定の共通点と相違点/年齢に関する修正
2 デビット・メソードの修正とリスク・ファクターの加味
デビットの数学的な修正/疾病の進行度に関する修正/疾病進行度の理解/リスク・ファクターの違い
3 生命表の修正と疾病による死亡率・生存率パターンの違い
生命表に関する修正/所得効果――所得が多いほど死亡率は低く、生命保険金額は大きい/生命表に基づく死亡率曲線の傾きの変化
4 ライフセトルメントの余命算定における誤謬を避けるために
余命算定で犯しやすいミス/母集団データに関するいくつかの問題/疾病(病気・障害)レベルと生存パターン(生存率曲線)の関連付けについて
5 ファサーノ社の余命算定方法の特色
余命算定のアプローチについて/複雑なケースに対するリサーチベースの臨床判断について/ファサーノの成果/結論/■ファサーノ・アンド・アソシエイツの概要

あとがきにかえて     監修 板垣哲史
《海外主要参考文献》

このページのトップへ

内容説明

新たな投資先として注目される生命保険の転売取引「ライフセトルメント」を詳説。金融商品特性や米国市場成立の経緯、その仕組み等々を包括的に論じた、金融関係者必読の書。

 

【前書きより】
米国にライフセトルメント市場があると知ったのは2008年6月でした。その当初は、上手い話には裏があるはずだと、にわかには信じられないというのが率直な感想でした。ほんとうに生命保険の転売なんてできるのか?  なぜ、市場に生命保険を売りに出す層がいるのか?  まして、保険証券への投資がなぜ2ケタの投資利回りを安定的に出せるのか?  リスクは何処にあるのか?  仕組みは?  などと次々に疑問が湧きました。そして、ひとつひとつの疑問を半年ほどかけて調べ続けました。
その結果、米国のみならずイギリスやドイツでもすでに保険の転売市場があり、消費者(被保険者)はインターネットを通じて生命保険を売りに出すこともできるということがわかってきました。欧米ではライフセトルメントが多くの消費者に経済的な恩恵をもたらしています。
一方、日本の保険事情を考えてみると、医療技術の進歩などにより年々平均寿命は延び続けていますが、日本の民間の生命保険商品は定期保険特約付終身保険の販売が主流で、平均寿命のはるか手前の60~65歳で定期保険が切れてしまうことが極めて大きな問題となっていることが浮かび上がってきました。
身近な話題としても、「終身保険の金額が絶対的に少ない」「定期保険をやめてすべて終身保険に切り替えた」といった話題がよく聞かれました。しかし、終身保険の保険料が高いので保険料を途中で払えなくなったり、何らかの理由で、終身保険が不要になった場合が心配です。日本でもし転売できる2次市場があれば消費者(被保険者)が保険を処分する際の利便性が高まると同時に、終身保険への切り替えを促すことになるでしょう。そんな考え方を支援する材料も見つかりました。日本にも保険の買取制度があってしかるべきだとの意見がすでに日本の学者より提示されていることもわかったのです。

こうした消費者サイドにもたらされる恩恵に加えて、ライフセトルメント市場に参加する投資家にとっても、生命保険の転売市場が時代の要請にかなうものだということがわかってきました。米国のライフセトルメント市場に投資するファンドは、リーマンショック後も右肩上がりの成績を上げ、実際には米ドルベースで10%、中には20%以上の投資収益をあげるファンドもあります。
投資家の置かれた投資環境は、リーマンショック後の様々な破綻処理、ギリシャ危機を発端にしたEU内の国家債務問題の深刻化など、引き続き不安定な状況です。そんななかで、伝統的な金融資産の動きと低い相関性を持つと言われるライフセトルメント投資の優位性が、改めて欧米の投資家の間で見直されています。

私たちは、わが国の消費者が長い老後の生活資金を自身の手で厚くするためにも保険の買取制度が日本で採用されるべき仕組みであると考えます。またライフセトルメント・ファンドは、極めて魅力的な投資商品であると確信しており、わが国の投資家にライフセトルメント投資の仕組みを分かり易く紹介することは意義のあることと考えました。そこで、日本の金融市場を少しでもグローバル・スタンダードに近づけたいと常日頃より意見交換してきた金融プロフェショナル有志により、2008年12月から私的な勉強会を立ち上げ、ライフセトルメントの研究を重ねてきました。ライフセトルメントに関する包括的な出版物は欧米でも2、3冊しかありません。ライフセトルメントという言葉を初めて聞いた人は、おそらく同じような疑問をいろいろ抱くだろうと考えました。そこで初心者目線からの入門書として、本書を出版することになりました。
本書が、消費者(保険契約者)はもとより、一般投資家の人々、さらに、プロフェッショナルな資本市場の関係者、年金運用などの機関投資家、生命保険業界の関係者にとり、身近な解説書として有益なものとなることを願っています。
なお、本書の執筆にあたり、内外の多くの研究者の方による学術論文や研究機関の調査資料、メディアによる記事などを参考にさせていただきました。また、保険学を専門とされる大学教授の方々の御意見からも多くを学ばせていただきました。さらに、海外のブローカー、プロバイダー、ファンド運営者などの業界関係者にインタビューを行い、業界動向や実務面の話を参考とさせていただきました。巻頭紙面をもって感謝の意を表したいと思います。中でも、米国5大メディカルアンダーライターの1社であるファサーノ・アンド・アソシエイツ社の特別寄稿により、本書の内容が一層充実したことは、研究会会員一同喜びに堪えません。快諾いただいたマイケル・ファサーノ社長に特別の敬意を表し、厚く御礼申し上げます。

2011年1月
日本ライフセトルメント研究会

このページのトップへ