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桃田万里子×福博充:「トンペン×ジャニヲタ 私たちは何を見ているのか?」第5回

日産スタジアム3daysが発表されるなど前人未到の領域を進む東方神起。
King & Princeがデビューするなど大きな変化があったジャニーズ事務所。
それぞれの熱心なファンである両者が、ファンとは何か?を語る、
ちょっとアカデミックな異色対談です。

目次

第1回■両ファンクラブに見る「自主」と「管理」
第2回■KPOPは、どこかで「異文化だからなんでもある」と思っていました。
第3回■究極のジャニヲタは、ジャニーズJr.を愛せる人たち?
第4回■私たちは「置かれた場所で咲きなさい」が好き!
第5回■アイドルと事務所は、花魁と置屋の関係に似ている
第6回■「メッチャ近いのにまだ双眼鏡で覗く人がいて、欲が深いと――」(桃田)
         「この間、同じこと言われました(笑)」(福)
第7回■「特等席で見られる、これが幸せな瞬間なんだと気づいたんです」
第8回■見られることに慣れていない私たち
第9回■ジャニーズの虚構とSMの虚構

【福博充(ふくひろみつ)】
東京大学大学院総合文化研究科「多文化共生・総合人間学プログラム」勤務。嵐の櫻井翔を見てジャニヲタの道へ。現在はJr.坦。男でありながらジャニーズにハマってゆく気持ちを『東大院生、僕、ジャニ男タです!』(2014年/小社刊)に記した。

 【桃田万里子(とうだまりこ)】
近代日本文学専攻。大学の非常勤講師をつとめた後、現在は別の仕事に従事。『東方神起 ユニゾンの瞬間』(2017年/小社刊)がある。

 


  

5回■アイドルと事務所は、花魁と置屋の関係に似ている

 

編集部・石井(以下・石):福さんはJr.を見ていらっしゃるじゃないですか。

福博充(以下・福):はい。

:Jr.を見る人って、ジャニー喜多川という存在が大きいんですよ。ジャニー喜多川の視線というものを、ものすごく意識されています。ジャニー喜多川とJr.ファンのシンクロ率はすごい感じるんですけど、SMは、例えばイ・スマンさんの眼差しというか、思想というか、愛し方というのに対してファンは――。

桃田万里子(以下・桃):むしろ批判的ですよね。

:愛情があって、ではなくて?

:なくて。私、自分でブログ書いていてすごく思うんですけど、これだけ所属事務所のことを厳しく言うファンって、いるんだろうか?って……。

:あんまり周りからはジャニーさんの悪口みたいなのは聞かないですね。

:いろいろな疑惑もあるし、みんな知っているんですけど、Jr.ファンの中で悪く言う人はいないんですよ。

:メリーさんに対しても、ジュリーさんに対しても。たしかに賛否両論はありますが……。

:基本的に好きですよね。

:ジャニーさんの目線はいつも話題になります。例えば舞台を見た後に。言葉は悪いかもしれませんが、ジャニーさんそろそろ終わりを悟っているんじゃないのかって。いや最近の舞台はジャニーさんの回想になっちゃっているんですよ! 〝平和主義〟的なテーマが露骨すぎて、これ、ジャニーさんが見たい思い出の世界を見せられているだけじゃない?って(笑)。そういうふうに同一視、アイデンティファイはしちゃっているかもしれない。

:だからこそ、ループに陥るというか。

:だって、ジャニーさんが新しいのをどんどん送り込んでくるから――。

:ジャニーさんと、アイドルと、ファンの三位一体であの舞台が成り立っているという特殊性があるわけですよね。

:「独裁」っていうのはこうやって生まれるんだろうなって思います。上から下まで秩序立つという。

:日本の芸能って、歌舞伎も含めて見てもそうだけど、まだ芽の出ていない役者に目をかけて自分が育てていくみたいな、あれがもともと素地として私たちの国に根付いているんですかね。だとしてSMの場合、イ・スマンさんをリスペクトするかというと……。

:その辺、不思議ですよね。

:事務所を企業として見ちゃっているんでしょうか?

:何に似ているかと思ったら、花魁と置屋みたいなものですよね。花魁は置屋の商品でもあるけど、一方で、置屋の被害者でもある。置屋がやってくれているから自分は会いに行けるけれど、その花魁を苦しめ、搾取しているのは置屋の主人。そういうふうに見ているのかなぁという感覚はあります。

:それはジャニーズファンにもあるかもしれないですね。昔、ニノ(二宮和也)が点滴を打ちながら活動していた、ということが明らかになった時に、嵐ファンの人は事務所を批判しました。けど、ジャニーさんではなかった。東方神起の場合、イ・スマンまで行きますか? 「SM」というと、あの顔が浮かぶんですか?

:やっぱりエイベックスじゃなければ、〝あいつ〟ですよね。スマンさんですね。

:浮かんじゃうんですね(笑)。

:うーん。

:去年の紅白で、欅坂46のメンバーが何人か本番中に倒れましたよね。で、ある人から、秋元康の名前が出てきたんですよ。秋元康が働かせすぎだから、と。私、その発想がなかったんですよ。ああ、そうか、言われてみればそうよね……と。

:私はわりと福さん寄りです。ものすごい初期費用をかけて、あれだけ訓練して、完成品にするまでどれだけ大変だったかということを考えると。結局、東方神起のメンバーを見出してくれたのもイ・スマンさんですよね?

:ですよねぇ。チャンミンもよくそう言う。

:イ・スマンさんを尊敬するような文化だったら、『SMTOWN』出演のアーティストを皆好きになるのかなぁと。

:そうかもしれませんね。でも、アーティスティックな面がどこかで前面に出ているがゆえに、繋がらないのかもしれません。アイドル半分、アーティスト半分で、けっこう個の部分が強いと思うんです。ユノやチャンミンの素晴らしさは、ユノ個人、チャンミン個人の素晴らしさであって、決してイ・スマンがプロデュースし、やったもんじゃないんだっていう考え方があるんでしょうね。エイベックスも、エイベ糞と書くことがあるんですよね。「糞が最悪のグッズ出しやがって」と書いている人が……。私は書いてませんよ(笑)。

:面白い!

:自分がブログを始めて文字を見るようになって、あるときフッと気が付いたのが、なんかすごくない?と思って。仮にも自分の愛するアーティストが所属している会社をこう呼ぶファンっているのか、と。

:その憎しみは、どこから来るんですか?

:分裂騒動の時の対応のまずさが原因の1つではあります。でも、コアなファンになればなるほど不満が溜まっていくんですよ。

:ジャニーズは(Jr.ファンの場合)事務所になんだかんだ従うようになるのがやっぱり道理。

:私達は、アーティストを好きになればなるほど「やっぱり会社の名前がSM(サド・マゾにかけて)なだけあるよな」みたいな。事務所マジ、ひどいわー、っていう。

:ハハハハハ。

:イ・スマンのスマンを日本語翻訳してゴメン野郎とかディスる。コアなファンになるほど。「SMー♡」というような人はあまり見たことがないです。いなくはないだろうとは思いますよ。トンペンさんの知り合いで、コアなトンペンさんがいるんですけど、EXOも好きSHINeeも好きですけど、彼女も「イ・スマン嫌い」って言っていました(笑)。チャンミンが「イ・スマン先生のおかげ」と言うのを聞きたくないって。どうしてなのか、私もわからないです。

:さっきのお話だと総合芸術はプロデューサーと、ファンと、アイドルの三位一体というお話ですよね。三位の三がないですね。

:そうですけど、SMの場合、ファンの作ってゆく部分の余地が大きいんですね。ランキングチャートの応援をするためにyoutubeの再生回数を上げなければいけない、とか。いつどのタイミングでCDを購入するのか、とか。ファンの役割はすごく大きい。「チャートの1位は私たちが取らせるものだ」という思いがファンの中にあります。よく笑われるんですけど、東方神起がカムバ活動(注)を開始すると、私たちすごい忙しくなるんですよ。寝ずにずっと再生しているとか、いつCD購入すると、何週にこのチャートに入るからとか計算していたり、常にチェックしているので寝る暇がない。深夜のコンビニで買い物していて、近所の人と会って、大丈夫? 目の下にクマがあるよ? と心配されたこともあります。

共同購入(注)のくだりはビックリしました、ジャニーズは、初回限定盤を始め3タイプくらい出すこともあるので、個々に全タイプ買うとか、保存版と2枚買うというのはあるのですが、みんなで分担して共同で買うというのは、すごいですよね。それがランキングに反映される。日本だと有名なランキングはオリコンぐらいしかない。

:そういうのでファンが働く余地があるからですかね。そういう意味でファンに力があって、私たちが育てている的なものもあるかもしれませんね。でも、〝育てている〟というよりは、やっぱ、応援ですね。

:SM所属タレント同士がちょっとずらしてCDを出すというのはあるんですか?

:ありますよ。それはあまりぶつけないです。カムバは1ヶ月くらいずらします。そうじゃないと共食いになっちゃいますからね。だけど(『SMTOWN』では)自分のグループのライトの数がどれくらい多いか、ファンはいつも気にしています(笑)。『SMTOWN』はピンクのライトをつけなければいけないんですけど、みんなこっそり持ってきてしまうので。「ちょっとスーパジュニアのファンが持ってきているんだけどなにアレ、私たちはルールを守ってピンクのライトしか持ってきていないのに!」とか(笑)。逆もありますね。

:ジャニーズカウントダウンではそういうことはないですよね?

:みんな大体好きなので、誰が来ても、事務所の先輩だったり後輩だったりするので、そうしたらみんなで応援するのが礼儀でしょ、っていうのはありますね。ただ座っている人はいます。そういう時、少なくとも私の周りは、みんなイラっとする(笑)。

 

【註】

カムバ活動:韓国では、アーティストは、年に一枚程度アルバムをリリースすることが多い。この約一年ぶりのリリースをカムバック(カムバ)という。カムバすると3ヶ月ほど音楽番組をメインに出演する。

共同購入:ファンが共同で、チャート集計店で一括して買うファン活動のひとつ。チャートを押し上げることを目的としている。




次回続く

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