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桃田万里子×福博充:「トンペン×ジャニヲタ 私たちは何を見ているのか?」第8回

日産スタジアム3daysが発表されるなど前人未到の領域を進む東方神起。
King & Princeがデビューするなど大きな変化があったジャニーズ事務所。
それぞれの熱心なファンである両者が、ファンとは何か?を語る、
ちょっとアカデミックな異色対談です。

目次

第1回■両ファンクラブに見る「自主」と「管理」
第2回■KPOPは、どこかで「異文化だからなんでもある」と思っていました。
第3回■究極のジャニヲタは、ジャニーズJr.を愛せる人たち?
第4回■私たちは「置かれた場所で咲きなさい」が好き!
第5回■アイドルと事務所は、花魁と置屋の関係に似ている
第6回■「メッチャ近いのにまだ双眼鏡で覗く人がいて、欲が深いと――」(桃田)
         「この間、同じこと言われました(笑)」(福)
第7回■「特等席で見られる、これが幸せな瞬間なんだと気づいたんです」
第8回■見られることに慣れていない私たち
第9回■ジャニーズの虚構とSMの虚構

【福博充(ふくひろみつ)】
東京大学大学院総合文化研究科「多文化共生・総合人間学プログラム」勤務。嵐の櫻井翔を見てジャニヲタの道へ。現在はJr.坦。男でありながらジャニーズにハマってゆく気持ちを『東大院生、僕、ジャニ男タです!』(2014年/小社刊)に記した。

 【桃田万里子(とうだまりこ)】
近代日本文学専攻。大学の非常勤講師をつとめた後、現在は別の仕事に従事。『東方神起 ユニゾンの瞬間』(2017年/小社刊)がある。

 


  

8回■見られることに慣れていない私たち

 

編集部・石井(以下・石):直近でいいますと、どういうファン活動をしていきたいと思いますか。

福博充(以下・福):今年はJr.へファンレターを出すことが目標です。相手も決まっていて、中身も出来ています。素晴らしいパフォーマンスをありがとうございます、から始まって、こう書くともう決めている。あとは、いつ、どうやって出すか? 列に並んで渡すか? 舞台へ行ったときにお手紙ボックスというのがあるのでそこへ入れるか? 返信用のハガキを一緒に入れると返ってくることもあるぞうで、それを貰いたい。貰ってどうするんだ?という話ですけど。ただ、相手は最近注目し始めたJr.で、古くから応援しているJr.には書けないんですよ。

桃田万里子(以下・桃):何ででしょうかね? 思いが積もりすぎて……。

:っていうか、今更何を書いていいかわからない。

:東方神起はサイン会かな。話すことができるらしいんですけど、いつも友達とサイン会で何を話すかという話題になります。

:ひと言?

:経験者の話ではちょっとやり取りができるらしいです。オフ会で「会えたら何を話しますか?」というのを、最初の挨拶のときに話してもらっているのですが、福さんなら何を言います?

:私は、実際に行ったことがあります。すごくいろいろ考えて行ったんですけど、結局何も言えませんでした。詰まっちゃって……感無量で……、ホントにひと言くらい。

:私もたぶん言えないと思う。兵役期間中に開催された展示会では、二人へ書いた手紙を入れるタイムカプセルがあったんですよ。その時も何を書こうか、書けばいいんだろうか、と友達とずっと考えていましたが、好きすぎて何も思いつかない。「歌ってて―」とか、なんか俳句みたいになってきちゃって――。

:「応援しています」では、ダメですか?

:ダメです。それじゃ、ありきたりです。

:ありきたりでいいじゃないですか。

:ダメです。そんな100万通りと同じ言葉。だから私は「あなたが私の人生の歌」と書きました。

:あ、格好いい。

:そういうところ、すごく格好つけちゃうんですよ、人文だから(笑)!太宰治だから(笑)! あとでそういうところで、格好つけた自分を後悔する。さっきの石井さんみたいに、シンプルな一言で終われる人が、うらやましくなる。無駄をそぎ落としているなぁみたいな気がします。自分は過剰なので。

:AKBや坂道グループは握手会をやっているじゃないですか。握手券一枚で三秒です。初めての人は、何も言えなかったという人もいますけど、面と向かうと大体「応援しています」で終わりますよ。あなたが私のどうのこうの、なんて――、

:面と向かったら言えないですよねぇ。初めてファンミに行った時に、一列目という神席が当たってしまって、通路を二人が歩いてきたことがあったんです。どうしよ、来る、来る!と思ったら怖くなってしまって。周りのファンも来ると思ってなくて、狂喜乱舞している。すごかったんですよ。屈強の男たちがレーンを押さえているんだけど、私たちの圧がウオオオーみたいな。私たちにとって人生で一生忘れられない幸せな瞬間だったけど、向こうにしてみたら気圧される瞬間だと思ったら、ちょっと見られなくなっちゃった(笑)。チャンミンのスーツの編み目を見ていました。新品だなって。チャンミンはサッと行っちゃったんですけど、ユノはサービスが良くて、近くにずっといた。「早く行ってよ!」って(笑)。で、行っちゃったら、その背中を安心して見られるという。

:それはそうでしょうね。

:でも、後ろの人がものすごい押してくる。限界。本当に、私が一列目になるんじゃなかった。本当にすみません、って心の中で思いました。でも、この一列目も譲りたくない(笑)。

:私はそこまで近くで見たことはないですけど、見ている自分がDVDに写ってしまったことがあります。その時に、本当に魂を抜かれている顔って、こういうものだ、と思いました。自分って、こんなに気持ち悪い顔をして見ていたんだって、ちょっと引いた(笑)。アレっていつも?って友達に聞いたら「常に」って言われました。あと、近づいて来れば来るほど青ざめているよって。メデューサ見た、みたいになっているよって。自分ではそのつもりないんですよ。ハアア……って感動しているつもりなんですけど。人から見るとただ固まっている石。

:そういうの、研究対象にできないんですかね? 眼差す者が〝眼差される〟という転回が起きたら、本当にメデューサに見られたように固まってしまう。それはすごい象徴的なことじゃないですか。じゃあ、私たちは一体何を眼差そうとしているんだろう、眼差すことで何をしているんだ? それが研究論文になるんじゃないか。

:哲学的な論文になりそうですね。

:それは福さんの専門ではない?

:そうですね。それを突き詰めてゆくと、別にJでなくてもいいかもしれない。ということになると、もうちょっと違うアプローチになるかなという気がします。それこそ制度の問題、例えば、なぜここまでJが力を持ったのかというと、日本のメディア状況、他の国にはない特殊な5大ネットワークというものがあると考えている。国民的な統一性が作りやすい背景があるのではないか、といった方が、私の関心かもしれません。その中で作られてゆくものを見る快楽ですね。

:私がね、福さんの本を読みながら、次の自分が考えて行くときのネタというか、テーマにしようと思ったのは、SMが作ろうとしているアイドル像と、ジャニーズが作ろうとしているアイドル像の何が違うのかな、ということです。重なっている部分はありますよね?

:あります。

:ジャニーズの育成システムはSMが参考にしたという歴史もありますから、重なっていておかしくない。でも、コアなファンになるほどジャニーさんをリスペクトしてゆくのとは反対に、我々はどんどん会社嫌いになって行くみたいな。やはり目指されているアイドル像が違うんだと思うんです。

:アーティストはサブジェクト(主体)が確実にないといけないですよね。私の方は、それはたしかに主体だけど、総合芸術のひとつなんだよ、という。置かれた場所、与えられもので、自分なりになんとか頑張ろうとしている。その、もがく姿が、好き。

:もがく姿(笑)。言っちゃいましたね。

:最近、語彙が少なくなってきて、とりあえず最後に、好きって(笑)。



次回続く

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